CIDPと共に生きる。難病と診断された私が、一番最初にしたかった5つのこと

CIDP

「CIDP(慢性炎症性脱髄性多発神経炎)です」

医師から、まるで天気予報のように淡々と告げられた聞き慣れない病名。 頭が真っ白になり、目の前が灰色に見えたあの日。

「これから私の人生はどうなってしまうんだろう」 そんな先の見えない不安と孤独に、今あなたは苛まれているかもしれません。

この記事では、CIDPとはどのような難病なのか、診断を受けてパニックになっている時にできる心の整理術などを、ひとつずつ丁寧にご紹介していきます。

これは、医学的な治療法の解説ではありません。 診断直後の混乱の中で、私が「もっと早く知りたかった」と心から願った、心を少しでも守るための「5つのこと」です。

CIDPって一体どんな病気?― “電線”の例えでやさしく解説

「慢性炎症性脱髄性多発神経炎」 …。聞き慣れない漢字の羅列。まるで呪文みたいですよね。私も告知を受けた時、そう思いました。 でも大丈夫。身近なものに例えると、CIDPの正体は、以外にもシンプルに理解することができます。

まず、私たちの体の中にある「神経」を、電気を通す「電線」だと想像してみてください。 この電線が、脳からの「動け!」という指令を、手や足にスムーズに届けています。

そして、普通の電線がビニールのカバーで覆われているように、私たちの神経も、「ミエリン鞘(しょう)」というカバーで覆われています。このカバーがあるおかげで、電気信号が漏れずに、脳からの指令が正しく伝わるのです。

しかし、CIDPという病気は、何らかの原因で、自分の免疫が間違ってこの神経のカバー(ミエリン鞘)を攻撃してしまう病気です。

カバーが傷ついた電線だと、電気がうまく伝わらなかったり、漏電したりしますよね。 それと同じで、手足に力が入らなくなったり(運動障害)、手足がジンジンしびれたり(感覚障害)といった症状が、ゆっくりと現れてくるのです。

これは、あなたの生活習慣や性格のせいでは決してありません。誰にでも起こりうる、体のシステムのエラーのようなものです。

そして、一番大切なこと。 CIDPは、症状を抑えたり、進行を緩やかにしたりできる、「治療法がある病気」です。

病気の正体が少しだけ分かると、漠然とした恐怖も少しだけ和らぎます。

次の章では、診断直後に誰もが抱える、具体的な不安について見ていきましょう。

「私だけ?」診断直後に誰もが抱える4つの不安

「病気のことは前の章で少しだけ分かった」。でも、頭の中は「これからどうなってしまうんだろう?」という、たくさんの不安が溢れてしまう方もいるかと思います。

ここに挙げるのは、CIDPと診断された直後に、多くの人が抱える代表的な4つの不安です。 「これも、あれも、私のことだ…」と感じるかもしれませんが、怖がらないで大丈夫。それは、あなたが一人ではない、という証拠です。

不安①:仕事や学校のこと

「今の仕事、続けられるのかな?」 「勉強についていけなくなったらどうしよう?」 「今後のキャリアプラン、全部考え直さないといけないの?」

不安②:周りの人間関係のこと

「家族や恋人、友達に、なんて説明すればいいんだろう?」 「『かわいそう』って、同情されたり、腫れ物みたいに扱われたりしないかな?」 「誰もこの病気のことを分かってくれないんじゃないか…」

不安③:治療のこと

「治療って痛いのかな?辛いのかな?」 「副作用でもっと苦しくなったらどうしよう?」 「治療費は一体いくらかかるんだろう…」

不安④:病気そのもののこと

「『難病』ってことは、もう絶対に治らないの?」 「これからどんどん体が動かなくなっていくの?」 「“普通”の生活はもうできないの?」

もしあなたが今、これらの不安のどれか、あるいは全てを抱えていたとしても、それは決して特別なことではありません。 診断直後に誰もが通る道です。私も中学生時代に診断を受けた時は、すべてに対して不安を感じていました。

大切なのは、その不安の嵐の中で一人で溺れてしまわないこと。

次の章では、その嵐の中で、少しでも心を落ち着けるための具体的な方法を、一緒に見ていきましょう。

パニックの中でもできる、最初の「心の整理術」3選

診断直後は、頭がぐちゃぐちゃで何も考えられないかもしれません。 「どうしよう」という不安だけが、嵐のように心に吹き荒れていることでしょう。

そんな嵐の中で無理に何かを決断したり、前向きになろうとしたりする必要は、全くありません。 まずは、その嵐を少しだけ鎮めるための、誰にでもできる「心の整理術」を3つ、試してみませんか?

整理術①:いったんスマホを閉じて、検索をやめる

診断直後、不安で情報を集めたくなる気持ちはよく分かります。 でも、今のあなたの心は、いわば“台風”の真ん中にいるような状態。そんな時に断片的な情報(特にネガティブな情報)を浴びると、余計にパニックが大きくなってしまいます。

まずは一日、いや、数時間だけでもいい。意識的にスマホの検索画面を閉じて、情報から距離を置きましょう。 今は、「知りすぎること」より、「心を休ませること」が一番の仕事です。

整理術②:頭の中の不安を全部ノートに書き出す

「仕事は?」「お金は?」「将来は?」…頭の中でぐるぐる回る不安は、放置するとどんどん大きくなります。 それを一旦、紙の上に全部出してみましょう。手に力が入らない場合は、スマホの音声入力などを活用するのもよいです。

箇条書きでも殴り書きでいい。誰にも見せる必要はありません。 ただ「書き出す」という作業をするだけで、自分の不安を少しだけ客観的に眺めることができます。「ああ、私は今こんなことに不安なんだな」と、少しだけ冷静になれるはずです。

整理術③:信頼できる人に「ただ、聞いてもらう」

この大きな不安をたった一人で抱えるのは、あまりにも過酷です。

家族、恋人、親友…誰でもいい。あなたのことを大切に思ってくれる人に、「実は、今日こんな診断をされたんだ」と、話してみませんか。

アドバイスは求めなくて大丈夫。「そっか、不安だよね」と、ただ、そばにいて聞いてもらう

それだけで心の重荷は、少しだけ軽くなるはずです。

診断された直後、治療を始める前、様々な不安に襲われ、「孤独」を感じてしまうかもしれません。私自身、誰にも本心を打ち明けられず、昇華できなかった感情に尾ひれがついて、長期間にわたり、「不安」と「孤独」に苛まれました。

だからこそ、”今”様々な不安と向き合っているあなたに、「独りにならないで」と、お伝えしたいです。

おわりに:病気は、あなたの価値を決めるものじゃない

ご自身の辛い気持ちと向き合いながら、最後までお読みいただき、ありがとうございました。

診断された日から、あなたの頭の中は、「CIDP患者の自分」という言葉でいっぱいになってしまっているかもしれません。 でも、忘れないでください。

CIDPは、あなたの人生の一部ではあるけれど、あなたのすべてではありません。 病気は、あなたの価値を何一つ決めるものではないのです。

これから先、治療で辛い日も、症状に落ち込む日も、あると思います。 でも、それと同時に、病気になったからこそ気づける人の優しさや、当たり前だと思っていた日常の愛おしさ、そして、困難に立ち向かう自分自身の強さに、出会うこともたくさんあるはずです。

CIDPと共に、泣いて、笑って、怒って、喜んで。 私たちは、生きていくことができます。

あなたの人生の物語は、病名一つで終わるようなちっぽけなものではありません。

どうか、あなたらしく、あなたのペースで。 この記事が、あなたが「病と共に、自分らしく生きる」ための一歩を踏み出す、小さな勇気になれたなら幸いです。

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