「最近、何を見ても楽しくない」
「朝、ベッドから起き上がるのが鉛のように重い」
「理由もないのに、ふと涙がこぼれる…」
もし、あなたがそんな日々に心当たりがあるのなら、それは決して甘えや気の持ちようの問題ではありません。
周りからは「頑張って」「みんなしんどいよ」と言われ、精神的問題のように思うかもしれません。しかし、あなたが感じているその苦しみは、根性論で乗り越えられるものではないのです。
今のつらい状況は、心のエネルギーが枯渇してしまった影響から発症する「うつ病」という、脳の不調和が送るSOSサインなのかもしれません。
この記事では、うつ病の経験とメンタルケアカウンセラーの資格を持つ私が、今まさに暗いトンネルの中にいるあなたの今の苦しみを正しく理解し、回復への道を歩み始めるための優しくて正確な道しるべを、一緒に歩みながら、解説していきます。
これってうつ病のサイン?心のSOSに気づくための症状チェック
うつ病のサインは、心だけでなく、身体にも現れます。もし、以下のような状態が2週間以上ほとんど毎日続いている場合は、専門家への相談を考えてみましょう。
【こころの症状】
- 理由もなく気分が落ち込み、憂うつになる
- 今まで楽しめていたことが、全く楽しいと感じられない
- 何をするにもやる気が出ない(意欲の低下)
- 「自分はダメな人間だ」「自分のせいだ」と自分を責めてしまう
- 将来に希望が持てず、不安や焦りを感じる
- 集中力がなくなり、本を読んだり、テレビを見たりするのが難しい
【からだの症状】
- なかなか寝付けない、夜中や朝方に目が覚めてしまう(または、寝すぎてしまう)
- 食欲が全くない(または、食べ過ぎてしまう)
- 体が鉛のように重く、常に疲れている
- 原因不明の頭痛や肩こり、腹痛などが続く
- 周りから「動きが遅くなった」と言われる
うつ病は“あなたのせい”じゃない。その仕組みと原因3選
まず、一番に伝えたいこと。うつ病は、あなたの「心の弱さ」が原因ではありません。
近年の研究では、脳の中にあるセロトニンなどの神経伝達物質のバランスが崩れることで起こる、「脳の機能的な病気」だと考えられています。
引き金は一つではなく、
- 環境要因:仕事のストレス、人間関係の悩み、大切な人との別れなど
- 性格傾向:真面目で責任感が強く、完璧主義な人
- 身体的要因:他の病気や、女性ホルモンの変化など
これらが複雑に絡み合い、誰にでも起こりうる病気なのです。だからどうか、自分を責めないでください。
回復への3つの柱。「休養」「薬物療法」「精神療法」
うつ病は、正しい治療を受ければ必ず良くなる病気です。その治療の基本となる3つの柱をご紹介します。
①「何もしない」という、最も大切な治療【休養】
「何もしていない自分」に対し、罪悪感を感じることもあるかもしれません。でも、機械にもメンテナンスが必要なように、人間にも、休養という名のメンテナンス期間が必要なのです。
うつ病の時の「休養」は、エネルギーが枯渇した脳を回復させるための、最も積極的で重要な治療です。最初はもやもやしてしまうかと思いますが、「何もしない自分」を、どうか許してあげてください。
② 脳のバランスを整えるお守り【薬物療法】
抗うつ薬などの薬は、性格を変えるものでは決してありません。乱れてしまった神経伝達物質のバランスを整え、あなたが本来持っている元気を取り戻すための、回復のお守りのような存在です。効果や副作用について不安なことは、必ず医師に相談し、自分に合った薬を処方してもらうことが大切です。
私も、うつ病を発症した当初に合わない薬を飲み続け、苦しい時期を経験しました。勇気が必要かもしれませんが、そんな時は必ず主治医に相談しましょう。
③ 心の癖を見直す対話【精神療法】
専門家との対話(カウンセリングなど)を通して、ストレスへの対処法を身につけたり、自分を追い詰めてしまう考え方の癖を少しずつ緩めていく方法です。
薬物療法と組み合わせて行うことで、再発防止にも繋がります。
今、つらいあなたへ。今日からできる、自分をいたわる最初の一歩4選
「病院に行くエネルギーすらない…」 そんなあなたに、今日からできる、自分を大切にするための小さなヒントを4つ贈ります。
- 完璧をやめる:「~すべき」という考えを、一旦お休みしましょう。シャワーを浴びることがしんどければ、顔を洗うだけでも100点満点です。
- 小さな「できた」を見つける:「ベッドから起き上がれた」「水を一杯飲めた」。それだけで、十分にすごい。うつ病に罹患している時は、全ての行動に何倍ものエネルギーを消費します。たとえ何もできなくても、1日を生きたあなた自身を褒めてあげてください。
- 「しんどい」と声に出してみる:もし信頼できる人がいるなら、「今、すごくしんどいの」と伝えてみてください。理解されるか不安に思うかもしれません。しかし、一人で抱え込まず、言葉にすることが、回復の第一歩になります。
- 専門機関に「繋がる」だけでいい:電話相談や自治体の相談窓口など、顔を見せずに話を聞いてもらえる場所があります。受診の前に、まずはそういった場所に繋がってみるのも、立派な一歩です。(厚生労働省が相談窓口を紹介しているので、よろしければ一度覗いてみてください。 困った時の相談方法・窓口|まもろうよ こころ|厚生労働省)
まとめ:トンネルの先には、必ず光がある

最後に。今あなたは、「もう二度と幸せになれないかもしれない」と感じているかもしれません。 その深く暗い道の先に本当に出口があるのかと、絶望的な気持ちになっているかもしれません。
でも、どうか信じてください。うつ病という名のトンネルにも、出口は必ず存在します。
その道を抜けた時、あなたはきっと、今より少しだけ強く、そして、人の痛みが分かる、優しい人になっていることでしょう。
あなたは、一人ではありません。この記事が、あなたの心を照らす小さな光となることを、心から願っています。
コメント