仕事で小さなミスをしては、「なんで私はこうなんだろう」と一日中引きずってしまう。 周りの期待に応えようと必死に頑張っているのに、心の中では常に「まだまだ足りない」と自分に鞭を打っている。
そんな風に、知らず知らずのうちに自分を責めることが癖になっていませんか?
もしかしたら、「自分に厳しくすることが、成長への近道だ」と考え、自分を追い込みすぎているのかもしれません。自分を責める癖”を手放し、自分自身が一番の味方になり、少しずつ自己肯定感を育てるための鍵があります。
それが、「セルフコンパッション(自分への思いやり)」です。
この記事では、「セルフコンパッション」とはなにか、そして、頑張り屋さんのあなたでも今日からすぐに実践できる簡単な始め方を、私の経験も交えながら、わかりやすく紹介していきます。
セルフコンパッションとは?
「セルフコンパッション」を直訳すると、「自分への思いやり」です。この項目では、セルフコンパッションを実践するうえで必要な3つの要素と、自分を甘やかすこととの明確な違いを、2つ紹介していきます。
セルフコンパッションを実践するうえで、大切な3つの要素
- 自分への優しさ(Self-Kindness): 親友が失敗して落ち込んでいたら、どんな言葉をかけますか?きっと、つめたい言葉ではなく、「そんな時もあるよ」「いつも頑張ってるじゃん」と優しい言葉をかけるはず。その優しさを、自分自身にも向けてあげることです。
- 共通の人間性(Common Humanity):失敗したり欠点があったりするのは、自分だけではありません。「辛いのは私だけじゃないんだ」「人間なんだから、完璧じゃなくて当たり前」と、自分の経験を特別なことではなく、誰もが経験する人間共通のものだと理解することです。
- マインドフルネス(Mindfulness): 自分の辛い気持ちやネガティブな感情から、目をそらしたり大げさに考えすぎたりせず、「そっか、今、私はこう感じてるんだな」と、ありのままに観察することです。
「自分を甘やかす」こととは、どう違うの?
「自分に優しくするなんて、ただ自分を甘やかして、成長が止まるだけじゃない?」。 頑張り屋さんほど、そう感じてしまうかもしれません。しかし、『優しくすること=甘やかすこと』ではありません。この項目では、「自分を甘やかすこと」と「セルフコンパッション」の違いを、解説していきます。
- 自分を甘やかすとは:一時的な快楽のために、長期的な成長から目をそらす行為です。 例:「仕事で失敗したから、もうどうでもいいや!今日は好きなだけお酒を飲んで、全部忘れちゃおう!」
- セルフコンパッションとは: 自分の成長を願っているからこそ、自分を思いやる行為です。 例:「仕事で失敗して、すごく辛いな。でも、人間だから失敗もするよ。この経験から何を学べるか、少しだけ考えてみよう」
このように、「自分を甘やかすこと」と、「セルフコンパッション」は、大きく異なります。
自暴自棄になってしまい現実逃避をすることと、失敗して落ち込んでしまっても、次につなげるために失敗した自分を受容し、失敗からなにを学べるかを前向きに考えることは大きく異なります。
私も最初は、失敗した自分を受容することに抵抗を感じましたが、セルフコンパッションを継続することで、少しずつそんな自分を受容し、前向きに考えられるようになりました。
【もしかして私も?】あなたの「自分への厳しさ」レベルチェックリスト
「自分に厳しくするのは、当たり前のこと」 そう思っていると、自分がどれだけ自分に厳しいか、なかなか気づけないものです。
そこで、今のあなたの「自分への厳しさ」レベルを、簡単なチェックリストで確認してみましょう。 心の状態を客観的に見るための、一つのきっかけとして使ってみてくださいね。
- 自分の小さなミスが許せず、何日も引きずってしまう
- 他人には優しい言葉をかけられるのに、自分には「まだまだ」「もっと頑張れ」と厳しい言葉ばかりかけてしまう
- 自分の長所よりも、短所や「できていないこと」ばかりに目が行く
- 何かがうまくいっても、「運が良かっただけ」と自分の頑張りを認められない
- 何もしていない時間があると、「時間を無駄にしてしまった」と罪悪感を感じる
- 他人から褒められても、「お世辞だ」と感じて素直に喜べない
- 常に「完璧」を目指していて、80点の出来では満足できない
いくつ当てはまりましたか?
もし、半分以上当てはまるものがあったなら、あなたは知らず知らずのうちに、自分自身を一番厳しい上司にしてしまっているのかもしれません。
でも、安心してください。それは、あなたが真面目で、向上心がある証拠でもあります。 次の章では、そんなあなたのために、その厳しさを優しさに変えるための具体的なヒントを紹介していきます。
心の筋トレ!今日からできる、自分を大切にするための4つの習慣
前の章で、自分が自分の一番厳しい上司になっていたことに気づけたかもしれません。 この章では、その厳しい上司を、優しい味方に変えていくための「心の筋トレ」を、4つ紹介します。筋肉と同じで、心もトレーニングで少しずつ変えていけます。
いきなり全部やろうとせず、一つでも「これならできそう」と思うものから試してみてくださいね。
習慣①:落ち込んでいるのが親友なら、なんて声をかける?と想像してみる
これは、自分の中の「厳しい声」を「優しい声」に切り替える、最も効果的なトレーニングです。
仕事でミスをして「私って本当にダメだ…」と自分を責めそうになった時、一度立ち止まって、こう想像してみてください。 「もし、同じことで大好きな親友が落ち込んでいたら、自分はなんて声をかけるだろう?」と。
きっと、「そんな時もあるよ」「いつも頑張ってるの、知ってるよ」「あなたのせいじゃない」…そんな優しい言葉をかけるはず。 その言葉こそ、今あなたがあなた自身にかけてあげるべき言葉です。
習慣②:「できたこと」を数える“加点法”日記をつける
自分を責めることが癖になっていると、つい、100点満点から「できなかったこと」を引き算して、自分を60点や70点だと評価しがちです。そうではなく、ゼロから「できたこと」を足し算していく練習をしてみましょう。
例えば、寝る前にノートに今日できたことを3つだけ書き出してみましょう。 「朝、時間通りに起きられた」「ランチに野菜を食べた」「笑顔で挨拶できた」など、どんなに小さなことでもOK。 自分のがんばりを「見える化」することで、自分を責めるクセから、自分を認めるクセへと上書き保存していくことができます。
習慣③:失敗を「学び」にリフレーミング(言い換え)する
完璧主義な人ほど、失敗を「自分の価値の証明」のように捉えがち。その考え方を少しずつ変えてみましょう。
何か失敗してしまった時、頭の中で自分を責める代わりに、「この経験から学べることは何だろう?」と問いかけてみてください。
「この失敗のおかげで、次はもっとうまくやる方法がわかった」 「この悔しさが、次の原動力になる」 失敗は、ただの「終わり」ではなく、未来の成功のための貴重なデータなのです。
習慣④:1日の終わりに「お疲れ様、私」と声に出す
これは一番簡単で、一番効果があるかもしれない習慣です。
一日が終わってベッドに入る前。鏡の前に立って、自分の目を見て、 「今日も一日、お疲れ様。よく頑張ったね、私」 と、実際に声に出して言ってみてください。
最初は照れくさいかもしれません。でも、言葉の力は絶大です。自分の耳で、自分を労う言葉を聞かせてあげることで、心は少しずつ癒され、「自分は大切にされていい存在なんだ」と実感できるようになっていきます。
紹介した4つの心の筋トレの中に、「これならできそう」と感じたものはありましたか?
最初はハードルが高く感じるかもしれませんが、慣れてくると、案外簡単に取り入れられるかと思います。私も最初は、「そんなことで変わるの?」と、疑念を持ちましたが、ゆっくりと継続していくことで、少しずつ、自分のことを大切にできるようになりました。
おわりに:自分の一番の味方は、自分になろう

この記事では、セルフコンパッションの解説から、自分を責める癖から脱却するための習慣を紹介しました。
これまで、あなたの心の中には、いつも厳しい「もう一人の自分」がいたかもしれません。 「まだまだ足りない」とあなたを追い立て、小さなミスを責め立てる、厳しい監督のような存在が。
でも、もうあなた自身を追い込む必要はありません。 これからのあなたに必要なのは、どんな時も、あなたの隣で「大丈夫だよ」「よく頑張ってるね」と微笑んでくれる、一番の味方である、もう一人の自分です。
この記事で紹介した4つの心の筋トレは、その「一番の味方」を、あなたの中に育てるためのトレーニングです。 すぐに完璧にできなくても、大丈夫。 「親友にかける言葉を、自分にも」 「できたことを、一つ数える」 その小さな一歩一歩が、あなたと、あなたの中の味方との絆を、ゆっくりと育ててくれることでしょう。
完璧じゃなくてもいい。 むしろ、完璧じゃない自分ごと、優しく抱きしめてあげてください。
あなたの人生の主人公は、他の誰でもない、あなた自身です。 どうか、あなた自身があなたの物語の最高の応援団長になり、肩の力を抜いて生きることができる環境作りをし、あなたの人生を、より豊かなものにしていきましょう!
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